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私達が小さい頃、毎日のように近所の神社に遊びに行っていました。
神主さんは、遊びに来る私達を温かく迎入れ、いつも楽しい話をしてくれました。
そんなある日、神主さんは、ある昔話を話してくれました――
昔々、ある所に仲の良い二人の美しい少女がいました。
少女達は少し変わり者で、人から嫌われていました。
そんな二人は毎日思っていたことがありました。
それは……
『この世界には色がない』
人は毎日、決まったように笑い、怒り、悲しみ、動く。
それは時計のように、変わることはない……
そして、二人は考えました。
『もっと、綺麗な色のある場所はないのか』
と――
ある日、二人は街を歩いていました。
人々は、二人を避けて睨むように見ています。
けれど、いつものことなので、気にしないで歩いていると……
ピタリと、いきなり二人以外の人の動きが止まりました。
まるで時間が、世界が止まったかのよう。
二人は驚いて、周りをキョロキョロと見渡していると、目の前に夜空みたいに綺麗な深い青色に光る扉が現れたのです。
そして
『君達が求めているモノはここの中に――』
優しく囁くような声が扉から聴こえてきました。
二人は、暫く顔を見合わせてると頷き、扉のなかに入って行きました。
扉が閉まると、粉のように空へと消えていき、人々は何も無かったというように、また動き始めました。
それ以来、二人の少女を見た者は誰一人、いません。
それどころか、ただ一人を除いては、二人のことを覚えている人がいませんでした。
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