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「ここでいい~?」
「うん。いつものとこ置いてて」
ひとしきりしゃべり合って、ようやく荷物を置く。
私がいつも置くのは真央ちゃんの部屋だ。翔太の部屋にはこうちゃんが置くんだ。
はぁー、重かった。
肩を回してちょっとだけ体操。
そして呼吸も整える。これからしっかりと冷静に接するために。
だって、翔太と話す時、楽しいけど緊張するから。
今は、翔太と二人で話すチャンス。
こうちゃんと真央ちゃん、そして大人達はキッチンで盛り上がっている様子。
私は、部屋でテレビを見ている翔太に近づいた。
「…ねぇ、今年のテスト何点だった~?」
最初に出た一言。最悪だ…。
もっと"ひさしぶり"とか"元気だった?"とか言うべきだった。
馬鹿!私の馬鹿っ!
さっき深呼吸したじゃんか!
頭は恥ずかしさでいっぱいだけどなるべく自然に振る舞う。
「ねぇー。どうだった?」
「普通ー」
「だから、何点?」
「さぁ」
意外と普通に返ってくる返事。私もちょっとほっとした。
けど、きっとコイツ…ほとんど聞いてないな……。テレビに夢中になってるだけ。
そう考えると少しがっかり。
…自分でも意味不明だ。
「成績表見せて」
「やだね」
「…なんで」
「嫌だから」
「何それっ」
他愛ない会話。
どうしよう、楽しいよ。普通の会話なのに。
実に、会うのは3、4か月ぶり。本当は会いたくて仕方がなかった。
だから、少しの会話でも楽しくて、嬉しくて。
横に居るだけで自然と口元が緩む。幸せすぎて。
この時間だけは、義理でも翔太の"いとこ"でいられて良かったと思う。
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