思いを閉じ込めて

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うちの家は大分で、いとこの家は熊本。だからちょっと遠くて、長い休みくらいしか会いにいけない。 けど、向こうの事情で長い休みでもいとこに会えない時もある。 だから私は会える時に会っておきたいなって思う。少ない時間を、いとこと少しでも楽しく過ごすために。 でも、私は一つお母さんに嘘をついているんだ。大好きないとこに会うために。 私はいとこが好き。と言っても、義理のいとこだけど。 だから、その想いはばれちゃ駄目なんだ。家族にだけは。 だから……嘘をつかなきゃいけない。 「真央ちゃんに会いたいなんて、いつまでも言ってるつもり?」 お母さんの言葉に、ぎくっ、と肩が震える。突然すぎだってば。 「…もちろん。だって、真央ちゃんは私の憧れだもん!」 「真央ちゃんだって、部活があるんだから。行ったって構ってくれなくなっちゃうわよ、そのうち」 「大丈夫!私がしつこく付きまとうから」 理由を作って、笑顔も作る。 できるだけ嘘だとばれないように、いつも通りに笑う。 「それに…その時は翔太にかまってもらうし」 「そう」 「そ」 やれやれ、といった様子で苦笑いを浮かべる母さん。 そう、本命はこっち。 真央ちゃんに会いたいのは、嘘ではなく本当。でも違う。 私が一番会いたいって思ってるのは、いとこの真央ちゃんの弟である翔太。 真央ちゃんに会いたいって言って母さんに詰め寄ったのは、ちょっとした口実。翔太に会うための。 さっき言ったように、真央ちゃんには本当に会いたいって思ってる。 可愛くてカッコ良くて、頭が良くて面白くて…。 そんないいとこだらけの真央ちゃんを本当に尊敬してるんだ。 でも。でもね。 翔太に会いたいっていう気持の方が大きくて、抑えられない。 会えなかった時なんて、泣いちゃったもん。簡単に言い表しちゃったけど、言葉で言えないくらい悲しくて…。 だから。 あんまり必死になってショウタに会いたい、会いたいって言ってると、気持ちがばれちゃいそうで怖いから。だから、言えない。 ごめんね、真央ちゃん。 お母さん。 みんな―――…。
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