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もう前髪も切らない時代に移り変わってしまった時代に、青年と言うには若く、少年と言うには大人びいた男が立っていた。
まだ少し寒さが残り、思わず脇の下に手をしまってしまう。
吐く息は淡白く宙に溶ける。
男はただボンヤリと少し雪をかぶった梅を眺めている。
そして ほつりと
「あの方は梅の花が好きだった」
誰にも聞こえない様な声で漏らした。
梅の花にも届かない。
届いた所で どうも ならない。
男には、やるせの無い音が心に響くだけだった。
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