春の雪

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現在いる、日野に逃げてからも暫く(しばらく)は隠れていた為みつけようが無かった。 最近になり、風の噂で聞くには故郷の美濃大垣、自宅に住んでいると言う。 さっきも言ったように、時代が変わってから随分たっているから、そろそろ故郷へ帰る気でいた市村にして見れば、都合の良い話しであった。 理由はそれだけで無く、佐藤宅に居るのがあまりにも辛かったからでもある。 市村の言う『あの方』がいた証があまりに多い為である。 あの方と言うのは新撰組が一の色男、土方歳三である。 市村の利発さと勝ち気さを気に入り己の小姓にした男。 市村は歳の関係もあると考えているが。 何せ入隊時は十四であった。 もう一人の少年も、新撰組局長、近藤勇の小姓にされていた。 市村はその少年、田村が今どうしているか知らない。
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