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話しは戻り何故そこまで辛いのかと言う訳だが、市村と土方は『恋仲』であった為である。
日野に居るのは五稜郭での土方の命令を受けた為である。
ただ命令と言うのは表向きで実際、箱の中身を開けて見れば市村を日野へ逃がす為の話しであった。
無論、届け物は渡された。一つは土方の歯形がついた写真、もう1つは愛刀と手紙。
手紙の内容は辞世の句と、市村の身を頼むものであった。
受け取った時の市村は瞳からの涙を止める事が出来なかった。
(嗚呼、このお方は死する気か)
とうなだれた。
それでも最初は断った。「私も戦にて死ぬ」と言ったのだ。
されど土方は
「逆らうならば今、お前を斬る」
と睨んだ。
市村は本当に『頼んでいるのだ』と顔を歪ませ泣きじゃくった。
(これが今生の別れ)
かと。
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