いつか、の物語

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「結び方は飛鳥でいいでしょう。髪は結い上げてびらびら簪と琥珀と珊瑚の簪でも」 「ちょ、それは派手過ぎよ。帯はもっと地味なのでいいし、結び方だって文庫でいいわ。髪も括るだけいいのに」 でないと月長に笑われる。 そう眉を下げる朱華とは逆に双樹はその流眉を逆立てた。 「あの馬鹿烏、まったく分かっていない。それくらい派手な飾りをしないと帯も着物も霞んでしまうんですよ」 朱華の瑞々しい美しさには下手に控えめな仕立ては逆効果だ。朱華の美貌だけが際立って、帯や着物が負けてしまう。 「でも、」 「いいからわたくしの言う通りになさい」 仕方なしに髪を結ってもらって、帯を結んでもらう。 一通り仕上がった姿を双樹はまじまじと見つめる。 「…変?」 「………」 「ねぇったら、」 「朱華、」 「朱華、朱華」 「朱華、朱華、朱華」 「美しい、ですよ」 「…ん、」 夢と現の狭間で未だ目覚めぬ (あれ?今のって、) (もしかして、)
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