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※弓幻以外の視点でお相手不明
「弓幻、」
傍らで煙管を吹かす女の、黒絹のような髪をついと引っ張る。
「………」
それでも、この女は返事をしない。
「、弓幻」
こっちを見ろ、と今一度髪を引くと、なんじゃと声だけ返された。
違う、そうじゃない。
「、弓幻」
「ぬしは、」
月を見上げ、ぼんやりと紫煙をくゆらせる女の姿にふと一抹の不安が過る。
芍薬の美貌はいつもと変わらぬはずなのに、それはいつか散ってしまうように思えた。
「なんだ、」
かんっと高い音を発てて、煙管の灰を捨てた女は漸く振り返った。
「儂を忘れろ」
「………馬鹿か、」
己の返事に笑んだ女は再び月に魅入った。
そんなこいつを見ている己がどのような顔をしているかなど、知りたくもなかった。
無理な話
(愛してはいけないと、言われた)
(もう遅いと、泣いてる気がした)
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