着信

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ジリリリリリリリィ。 ジリリリリリリリィ。 午後十時。 冷房の効いた一室。 暗い空間で、ベルのけたたましい音が鳴り響く。 「……」 頭上に手を伸ばすと、音の根元を掴み取る。 乱雑な手つきでアラームモードをオフにすると、その青い目覚まし時計を元の位置に戻した。 変に几帳面な性から、普段より目覚まし時計の定位置はカラーボックスの端に平行に設置、と決めていたりする。 何故カラーボックスかというと、この漆喰のカラーボックスを買った当時は布団で色々と都合が良く、ベッドに買い換えた今でもそれをずるずる使っている、というわけだ。 ちなみに横倒しにしている。 「さて、そろそろ繋――、……」 MMMのメンテナンスは午後九時で終了。 多少は終了時刻に変動が生じることもあるだろうが、予定時刻より一時間も経過しているとなればまず問題なくログイン出来るだろう。 とはいえ。 「あの人形……」 どうしてもあの人形のことが気掛かりだった。 それに、何か引っ掛かるのだ。 あれからほぼ惰性的に帰宅すると、夕食を口にしすぐに仮眠に入った。 その間、一つ打開策に成り得ることを思い付いた。 しかし、それを実行するのには少々問題があり、悩んでいる内に現在に至った。 「……仕方ないか」 早い内に決断していれば良かったのだが、今となってはどうしようもない。 俺は同じくカラーボックス定位置から黒い二つ折りの携帯電話をひっ掴むと、開いて電話帳を開く。 「この時間帯は……アトリエの方か?」 電話帳から"家族"のグループを開いた後、"南の孤島"を選択した。
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