プロローグ

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画面一面に広がるファンタジーワールド。 その中央の頭上に"レイジー"と表示されているアバターを見て、深く溜め息を吐く。 レイジー。 本名、南零二から取ったキャラクターネーム。 当初は"レイジ"という名を付け、赤髪赤目物理攻撃力極振りのトリッキーなキャラクターを作成したかったものの、案の定オンラインゲーム名物"その名前は別のユーザーが既に使用している為選択出来ません"のメッセージで頓挫。 結果、"※これらの名前であれば選択可能です"、とその名前に似通った名前がいくつか表示され、その中から選ぶこととなった。 とはいえ、今現在において問題とする点はそこではない。 そのアバターの装備だ。 上から"武者兜"、"ハードレザーアーマー"、"ハイチェーンフォールド"、"エンジニアブーツ"。 武器が"原初刀ー一文字ー"、アクセサリーが"パワーエンブレム"に"ブラッドオーブ"。 見事なまでに統一性がない。 今回のイベントで入手した武者兜と原初刀ー一文字ーを除けば、かなり残念な装備だ。 今回のイベントで未取得の装備は、胴腰脚共通装備の"武者の鎧"にアクセサリー"武者魂"。 武者魂はコンプリートアイテムだから、実質武者の鎧だけが欠けている状態。 「イベント終了、は……確か今日の……朝9時のメンテナンスまで、だったっけか」 記憶の片隅にあった情報を復唱してみる。 と、 「ふ……ふひ、フヒハハハハ……!」 我ながら気味の悪い笑みが込み上げてくる。 「……ヤッテヤル!」 充血した眼をディスプレイへ向け、一人呟く高校一年生。 そんな残念な空気を払える気がして、スピーカーの音量を少し上げた。 今思えば、この時潔く諦めてさえいれば、登校中あんな目に会うこともなかったのだろう。
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