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一つ、気付いたことがある。
あの人形についてだ。
……いや、気付いた、というより、思い出した、の方が適切かも知れない。
あの銀髪紅眼のビスクドールと断定することはできないが、俺はあれを、あれに似た人形を持っていたのかも知れない。
確か……そう、小学校入学前には持っていたと思う。
小学生に上がってからの人形に関する記憶は何一つ思い出せない。
だとすると、それ以前――園児の頃に無くすかしたのだろう。
しかし……そうか。
それなら何とか宛がある。
上手くいけば何か掴め――
『――っ』
……?
『――――っ!』
何だ……?
『――――――って言ってるでしょっ!?』
「っ……」
誰だ……うるさいな。
女の声……ということは、担任ではなさそうだけど……
ならば誰だろうか。
思い当たる節が全くない。
というのも、この高校に入学してから未だ一人も友人と呼べる人間に巡り会えないでいる。
いやまぁ、他のクラスへ行けば中学からの友人くらいいるし、今が昼休み真っ只中だとするなら不自然なことではないだろう。
……普通なら。
あいつら薄情だからな……
「ねぇってばっ!」
ユサユサ、と体を揺らされる。
あー、うざい。
いっそこのまま二度寝に入ってしまおうか。
「起ーきーろーっ!」
そんな思考に考慮してくれるわけもなく、声の主はより大きく揺さぶってくる。
……あーもう。
「……なに?」
今起きたばかり、という風を装い、俺はゆっくりと顔を上げた。
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