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「で……マジで何の用なわけ?」
グダグダと続く意味不明なやり取りを払拭すべく、俺は少々シリアス調の声音で応じた。
そもそもの話、面識のない女子生徒に脳をシェイクされるようなことをした覚えはないのだが、それはそれ。
この流れ、どちらかが大人にならなければ延々と続くだろう。
ならば、ここは大人の俺が一歩引こうではないか。
単純明快、至極簡単な話だ。
そんなこちらの考えを察したのかどうかは知らないが、対する女子生徒は一瞬ポカンと呆けたあと、今度は顔を赤らめこちらを睨め付けてくる。
……まぁ、多分アレだ。
どうやらこのやり取りは俺の勝ちのようだ。
全然嬉しくはないけど。
「っ、ま、まぁいいわ。ようやく話を聞く気になったようね!」
「……」
うん。
もうどうでもいいから早く解放して下さい……
尤も、そんな心の声が届くわけもなく。
女子生徒はわざとらしくコホン、と咳き込むと、したり顔で告げた。
「今日付けでクラス委員長になった遊佐明里よ。宜しく」
ドヤァ……
そんな効果音を彼女のバックに感じた。
いや、そんな得意気になられましても……
「そうですか」
スクールバッグから弁当箱を取り出す。
昼食は基本的にはコンビニなんかで調達するが、週に一回くらいはこうして前日に用意しておいた弁当を持参する。
弁当箱を開けると、取り敢えずプチトマトに手を掛ける。
うむ、美味い。
付け合わせの塩が味をより引き立てている。
愛好家の方々からは邪道の判定を受けること必至であるが、俺はそうは思わない。
確かに、俺にも塩や砂糖を振り掛けることを邪道と捉えていた時期があった。
しかし、何物にも引き立て役である"華"は必要だ。
いまだに砂糖は馴染めないが、いつしか塩への抵抗感は薄れていった。
そう、俺は悟りを開いたのだ。
……で、何の話だっけ?
「ぐぐぐ……」
と、楽しいランチタイムの中般若が一名。
ぐぐぐ、とか言ってるよこの人……
面倒だが応答を続けなければならないようだ。
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