プロローグ

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「なんすか委員長、早く飯食いたいんすけど」 思えば、委員長が一クラスメイトである自分を起こしてまで話し掛けてくる、という点には疑問を覚える。 意味が分からないが、このまま適当に流していては解放されないだろう。 腹を決め、自称委員長の女子生徒の発言を待つ。 ……腹を決めるとはいえ、心のどこかで楽観視していたのだろう。 次の発言に、俺の思考は完全に固まった。 「……そうね。早く昼食を食べ始めないとこれからの打ち合わせに入れないものね……男子クラス委員長の南零二さん」 ……。 …………。 ………………。 「イミガワカラナイノデスガ」 思考能力が著しく低下している中、無理に言葉を絞り出したからか片言になってしまう。 意味が分からない上に、意味が分からない。 何をどうしたら寝ている間に委員長にされるのだろう。 そもそも寝ている間に選任するとか卑怯……ってまさか!? 「寝てたからか!?」 少し考えれば分かるようなことだが、最大級に嫌な役回りにされたことがショックで頭が回らなかった。 全校生徒の代表たる生徒会に入れられるよりは遥かにマシだが、それでもクラスの代表者というのも不愉快極まりない。 正直、メンドクサイ。 別に答えを求めて嘆いたわけではなかったが、ポニーテール委員長遊佐明里――以後ユサとする――は、俺の言葉に律儀に返答した。 「半分正解」 半分は当たっているらしい。 YESかNOか半分か、というフレーズを昔耳にしたことがあるが、なるほどこういう時に使うのか。 ユサはこちらが無言なのを正答が掴めないと受け取ったのか、続けた。 「アタシは入試で学年二位。そして新入生代表としてスピーチをした」 ドヤァ…… そんな効果音を彼女のバックに感じた。 いや、だからそんな得意気になられましても…… 「ソレハスゴイスゴイボクハレキシヲマノアタリニシテイルー」 言って、ウインナーに箸を突き刺す。 「……」 物凄い形相で睨み付けられた。 どうやら話の腰を折られることを人一倍嫌っているようだ。 続けて下さい、という意を込め動作を停止させる。
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