雪のとばり

6/7
前へ
/22ページ
次へ
『今日は雪が降るらしいみたいだね。』 『そうだな。帰り気をつけろよ?』 俺と和人は自転車で地元の駅まで行き、そこから電車でそれぞれの目的地へ向かう。 時折、和人が学校の都合なのか 他に用事でもあるのか 早く家を出るとき以外は 俺と和人はほぼ毎日、こうして談笑しながら 学校へ向かう。   俺は都内の大学 和人は俺よりもちょっと遠くの専門学校に通っている。 因みに、圭一は高校をでて直ぐに就職。 恒太、恭介は高校生として毎日学校に通っている。   公彦は小学生。 ランドセルを背負いバスで学校へ向かっている。   電車内に無機質なアナウンスが流れ、自分の目的地の到着を知らせた。 『じゃぁ』 『おぅ。じゃな』 和人が俺の肩をポンっと叩く 軽く挨拶して電車から降りた。       『なんだか、やけに騒がしいな・・・』 いつもより人がいるというわけでもないのに やたら活気があるように感じた。 いや・・・でも何か違うような気も・・・ 学校への短い距離を歩きながら 冬の突き刺す風が掛けめぐっていくのを感じる。 耳障りな救急隊や消防隊、それから、パトカーの織り成す喧騒が耳を突き刺してくる。   『あれ・・・?』   視界がフェードアウトしだした。  自分の身体が静止した気がした。 脳が足へ停止命令を送ったのではなく 命令をすることを放棄したようだった。 重力感覚が揺れ俺の身体は地面に叩きつけられたらしい。   コロコロコロコロ・・・・・・ 俺のポケットから転がっていくそれを俺はただ見ているだけの人形になった。   『気をつけろよ・・・』 知らない間に降り出した雪のとばりから、そんな声を聞いた。      
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加