陽炎の奥。

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自分の瞳が青い空と 白い入道雲を映しているのを感じた。   ずっと遠くで雲が流れ 少しずつ雲の形が変わっていくのを感じた。 俺の見ているのは、所詮はただの水蒸気の塊のはずだ。   でも、あの遠くに見えるガス状の幻想は小さな風で ちょっとずつ変わっていく・・・   あぁ・・・力って凄いなぁ・・・ って思った。 今の俺にはできっこない力だ・・・。   いつか 俺にもあんな風に大きな雲を動かす事が出来るんだろうか・・・       『できるさ―』 誰・・・?   『できるさ―』 誰なの?   揺れる陽炎に向かって俺は手を伸ばす。 見えないはずの蜃気楼を追いかける様に、 ただただ衝動的に俺は 自分の力で自分の身体を引っ張った。 能動的に似た衝動的に・・・   『ほら、やっぱりできるじゃないか―』 それでも、俺は悲しいよ。 寂しくて辛くて― 俺はちっぽけで、臆病で 素直じゃないから・・・悲しいよ   俺には何も無いから   『何も無いなんてことはないだろう―』   『―だから・・・―がんばれ』     昔、誰かに言われた気がする。   地平線の彼方よりも遠く霞んでいた あの陽炎の先に・・・
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