遠い理想郷

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エム氏は眠る。 夢は見ているのか、それとも見ていないのか。光速の10パーセントの宇宙船はたゆたうように星の海原を泳ぎ、やがて目的の惑星まであと少し。 ブザーが鳴りエム氏の冷凍カプセルの蓋が開く。 エム氏は目覚める。深いシワを刻んだ肌。真っ白になった頭髪。重たそうに体を起こすが、見開いた目の光は出発した頃となにも変わらない。 やっと着いた。ぼそりとつぶやくがエム氏の心は言葉とは裏腹に喜びに打ち震えている。 やがて宇宙船はプログラム通り大気圏に突入し、ゆっくりと地表に着陸する。150年前にプログラムした通り、寸分の誤差もない。
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