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着陸を確認して、エム氏は宇宙船のハッチを開くボタンを押した。低い駆動音とともにゆっくりとハッチが開き始める。宇宙服は身につけていない。
この星の大気は地球と変わらないのだ。
私は人類で一番遠いところまで来たんだ。我知らずはらりと涙がこぼれる。
やがてハッチが開ききり、差し込んでくる陽光のまぶしさに目が慣れると、ファンファーレが鳴り響いた。
驚くエム氏。眼前には黒山の人だかり。みんな口々におめでとうとかお疲れさまとか言っている。
どういうことだ?ここは地球なのか。何かのトラブルで私は地球に戻ってきてしまったのか?
混乱するエム氏に、身なりのいい紳士が近づき、声を掛ける。
「長い航海、本当に御苦労さまでした」
うろたえるエム氏。震える声で、疑問を口にした。
「ここはどこですか?私ははどうして地球に戻ってきてしまったのですか?」
紳士は優しく首をふる
「いいえ、ここはあなたの目指した星ですよ。地球から十五光年はなれたところです。実は貴方が旅立ってからしばらくしてもっと高性能のエンジンが開発されましてね。いまではこの星まで地球から十年も掛からない。おかげで今では都市も出来ました」
エム氏は震えて落胆した。紳士が優しく背を撫でる。
「貴方を救出することももちろん考えられたのですが、何しろ貴方の宇宙船は旧式で、下手に手をだしたらどんなトラブルがおきるかわからないもので」
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