惚れ薬

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エム氏は大手建設会社に勤めるエリートサラリーマンである。歳は30の半ば、既婚である。 その彼が、午後を早退して病院に訪れた。受け付けに保険証を提示し、しばらく待たされた後、診察室で年配の医者から問診を受ける。 4、5分で診察は終わり、処方箋を貰った。それを病院内の薬局に渡せば、エム氏が必要な薬が手に入る。 すなわち、惚れ薬である。 一昔前なら、惚れ薬など陳腐なSFや低俗なファンタジーのなかの産物であったが、科学の進歩した現代においては、医者の処方箋と紙幣数枚で買える医薬品である。 エム氏が惚れ薬を必要になったのにはもちろん理由がある。 今朝のことだ。
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