遠い理想郷

4/8
前へ
/66ページ
次へ
私こそが行くべきだ。そのための厳しい訓練も積み、結婚したばかりの妻と別れることも厭わない。すべてを犠牲にしてでも、いやすべてを犠牲にするからこそ、私が行くべきだ。 エム氏の願い通り、新型エンジンを搭載したロケットを使い、有人で地球型惑星を探検する計画が始動する。問題はまだ山積している。いかに航行時間が430万年から150年に短縮されたところで、現実的に150年の旅路を耐えうるまで人類の寿命は延びていない。150年という時間の問題を解決するために、さまざまプランが提出される。 100人単位のコミュニティを宇宙船に乗せ、世代交代を繰り返しながら長い旅を続けるか、という策は現実的にそれほど大きな宇宙船を建造できないことから断念される。 いっそのこと有人ではなくロボットで航海しては、という策はすでに別計画で始動しており、有人での地球型惑星の探査という今回の計画そのものから逸脱している。 最終的に採用された策が、冷凍睡眠による航海である。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加