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「んっ、だめよ……もう、……行かなきゃ」
私の肩を優しく押し戻しながら、彼女が言う。
いつも冷静で、感情に押し流されることのない彼女が、少し憎らしい。
不満げな私の頬に、そっと触れながら、彼女は言うのだ。
「今夜、成功したら……ねっ?」
また負けだ……。
そう思いながら、私は彼女とふたり、オフィスを後にした。
繁華街の入り口で、タクシーを降りる。
酔っ払いのサラリーマンや、カップルを追い越しながら、ふたりで足早に歩く。
目的の雑居ビルを見つけると、彼女が言った。
「さぁ、気合い入れて行くわよ!」
「了解!」
彼女に応えながら、ビル入り口の古びたエレベーターに乗り込む。
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