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私は手始めに、周りの社員の目を盗みながら、シンにファン登録をしている女性クリエイターのファン登録を解除し、シンのしているファン登録も全て解除した。
すぐに彼の伝言板はファン登録解除のことで沸き立った。
何人かの女性クリエイターは、ファン登録を解除されたことに腹を立て、彼のもとを去っていった。
それでも、しつこく彼につきまとう女性クリエイターも少なくはなかった。
私はそういった女性クリエイターに対して何度もファン登録解除をし、場合によってはペナルティーを与え、伝言板への書き込みを封じた。
そうしているうちに、私の目論見どおり、彼の伝言板からは、女性クリエイターの姿はなくなった。
もう彼に近づけるのは私だけ、彼は私だけのもの、私はそう思い、ほくそえんだ。
私は携帯電話を取りだし、シンのプロフィール画面を開いた。
そして、伝言板にコメントを残そうとしたそのとき、背後から肩をポンと叩かれた。
慌ててシンのプロフィール画面を消して振り返ると、そこにはニヤリと不敵な笑みを神原が立っていた。
「神原さん、何かご用ですか?」
私は目を合わさないようにして言った。
「君だろう?」
神原はそう言って、フッと小さく笑った。
「何がですか?」
「シンというクリエイターのファンを解除したりしてるのがだよ。そんなに彼が好きなのか?」
「貴方には関係ありません」
「それが、関係あるんだよ」
神原は胸ポケットの中から携帯電話を取りだし、その画面を私に向けた。
そこにはシンのプロフィール画面が表示されていた。
ただ、私がいつも見ているのと違うのは、本人しか見ることができない編集画面があることだ。
「そんなにまで好きでいてくれてありがとう。僕も君が好きだよ」
神原はいつものいやらしい目付きで、私を舐め回すように見ながら言った。
私はただ、青ざめるしかなかった。
涙も出なかった。
ただ、彼に弱味を握られた私がこれからどうなるのか、恐怖に苛まれ、震え続けた。
(完)
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