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そんな私にも目標がないわけではない。
私の目標、それは小説家になることだ。
私が小説を書き始めたのは大学生の頃のことだった。
それまでずっと本を読むことに悦びを覚えてきた私だったが、多くの本を読みすぎたせいか、あるいはその頃に私が選んでいた本が悪かったせいか、私はそこに造り上げられた既製の世界に満足することができなくなっていた。
そして、満足できる世界を求めて次から次へと本を読み漁るほど、私の中には不満だけが鬱積していった。
そうして積み上げられた不満は、やがて私の意識を執筆へと向けていった。
満足できる世界がそこに存在しないのであれば、自分の手で造り出せばいい、と。
気がつくと、私はパソコンの前に座り、慣れない手つきでキーボードを叩いていた。
しかし、それまでに他人の何倍もの本を読んできたとはいえ、まともに文章など書いたことのない私にとって、一つの世界を文章で紡ぎ上げることは、決して容易ではなかった。
描きたい世界は確実にそこに存在するにもかかわらず、それを私が文章に置き換えた瞬間、それは私が描きたかったものとは全く違った世界としてそこに造り上げられてしまうのだ。
あるいは、私には社会適合性だけでなく、文才というものも欠けているのかもしれない。
しかし、文章を書くというのは一つの技術に過ぎない。
世の中に存在するほとんど全ての技術というものは、訓練することによってそのレヴェルを上げることが可能だ。
もっとも、そのレヴェルが一流に達するか否かというのはまた別の話であって、そこにはまさに才能というものが必要となろう。
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