ゴミ箱を漁る作家の苦悩

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バンダナを額に巻き、上半身はねずみ色のよれよれのパーカー、下半身はダボダボのジーンズ、足元は穿き古してヒビが入ったスニーカーという出で立ちはほぼ毎日変わらない。 本人は洒落ているとでも思っているのか、指のない革手袋を左手にだけはめていた。 鞄はアウトドアブランドのリュックサックで暗い色ばかりのコーディネートの中でこの鞄だけが毒々しいほどに明るい色彩だ。 リュックサックにはこの手のファッションを常とする男性のご多分に漏れずポスターが刺さっている。 ポスターは先ほど購入したパソコンゲームの初回限定特典でついてきたものである。 一般的な思考の持ち主であれば部屋に貼ることが憚られる類いのポスターであるが、三宅は既に部屋のどこに貼るかまで検討済みであった。
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