ゴミ箱を漁る作家の苦悩

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金を払えば誰でも親密にご主人様と慕ってくれる店であることは三宅も充分承知しいる。 自分が特別なわけではないと冷静に考えて、すみれへの恋心に歯止めをかけていた。 だがそれは客と店員という垣根を自ら作り、行動に移せないのは自分の気弱さが原因ではなく、自分が分別のある常識人だと言うところに逃げ道を設けた言い訳でもあった。 すみれと魔法少女マジカの話から始まった漫画談義を終えた三宅は満足げに店を後にした。 すみれは決して三宅の仕事などの個人的な質問はしてこない。 それは聞くまでもなく聞いてはいけないことと判断しているからである。 居心地のよさがこの手の商売には不可欠である。 無駄なことは聞かない。 もちろんすみれにしても三宅の職業などに興味がなかったというのも聞かない理由のひとつである。
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