第一章 現代から戦国へ

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そして、その日の晩―――――――――私はいつもと違う夢を見る。 そこの舞台は、木々が生い茂る山の中。遠くの方では水が流れる音が響き、空は青々としている。 そんな場所に…一組の男女が、一人の女性と対峙していた。 一人の女性は、淡い水色の着物を身にまとい、お姫様のような風貌をしていた。しかし、その胸にはなんと、矢が突き刺さっている。そして、その側にいる侍の恰好をした男性は嘆いていた。どうやら、彼の撃った矢が水色の着物を着た女性に誤って当たってしまったようだ。 「自ら愛する者を討つとはな…。なんとも愚かな男よ…!!」 その近くで、高らかに笑う女がいた。 矢が突き刺さっている女性とは対照的ともいえる、赤や黒などの模様や刺繍が入り混じった、豪華絢爛な着物を身にまとっている。 「人は己(おの)が欲望のために、他人を殺す。そして、その争いはまた更なる争いを呼び、それは永遠に続く…!それが全てなのじゃ…!!!」 その女性(ひと)は、彼らを見下すように話す。  あれ…?あの数珠… 一組の男女の側に転がっている数珠が、私の視界に入ってくる。ただし、この光景自体がまるで空から眺めているようなかんじだったため、はっきりとよくは見えなかった。  誤って刺さった矢…白い数珠…。もしかして、また…? 狭子がまた里見八犬伝の夢かと思い始めた直後… 「…どうやら、良い退屈しのぎになりそうだな」 どこからか、見知らぬ声が聞こえる。 「え…!!?」 私は周囲を見渡す。 しかし、あそこにいる3人の男女の誰にも当てはまらない声をしていた。  あれ・・・? 目を凝らしてよく見てみると・・・そこには、彼ら以外の人影が一つある。その後姿を狭子は不思議に感じた。TVドラマのワンシーンを映しているように、上空からの視界が徐々に近づく。ついには、その人影と同じ目線くらいまでに視線が移動していた。  白髪に、変わった柄の着物・・・。外国の人とかかな・・・? 私がそう思ったのとほぼ同時に、人影は自分の方に振り向こうとする。その直後、夢は終わってしまった―――――――
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