第一章 現代から戦国へ

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昨晩の夢…あれって、何だったのかな…? 翌日、放課後になってから私は学校の図書室にいた。 「八犬伝…っと。あった!」 図書室の棚から『南総里見八犬伝』について書かれた本を探し出す。 そして、物語の冒頭にある伏姫のシーンをパラパラと読む。  私の記憶が正しければ、昨夜の夢はこの“伏姫が自害し、「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の字が刻まれた8つの玉が離散する”前後当たりよね… 考え事をしながら、狭子は立ち上がり貸出受付に向かう。 「…?」 図書室の教師に本を手渡した時、見慣れた人物の名前が載っている事に気が付く。 「先生!あいつ…染谷君、昨日来ていたんですか?」 私は本の貸し出しカードに書かれた人物の名前を指さしながら言う。 「…ええ。ちょうど、今ぐらいの時間にこれを返しに来たけど…?」 「そうですか…」 八犬伝の本を受け取った後、ゆっくりと校舎を出ようと歩き始める。 彼―――――染谷純一(そめやじゅんいち)というのは、小学校からずっと一緒の幼馴染。しかし、彼はこの高校の定時制に通っている生徒なので、昼間に来るという事は滅多にないはずなのだ。 「しかも、あいつが里見八犬伝(これ)を借りるなんて…ね」 歴史好きの狭子に比べれば、彼がこのような伝奇ものを読むのはありえないくらい、染谷という少年は歴史が嫌いらしい。 どういう風の吹き回しだろうと考えながら私は進み、廊下の階段を降り始めた時だった。
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