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『助けて…』
「!!?」
頭の中に、女性の声が響いてくる。
それと同時に、クラッと軽い眩暈を感じる狭子。
「これ…は…!?」
その後、私の頭には頭痛と共に、いろんな風景が走馬灯のように駆け巡る。
見知らぬ山や川。そして、語り合う人々や、地面に飛び散る血痕。見覚えのない風景ばかりであった。
「何…?なん…なの…!?」
持っていたカバンを地面に落とし、頭を抱え始める。
『彼らを…導いてあげて…。お願い…!!』
頭の中に響く声は、狭子に語るような口調で話す。
「あなたは誰…?どうして、私…に…!!?」
苦し紛れに声を張り上げるが、彼女の周囲には誰もいないため、返事をする者はいない。
強烈な頭痛のため、頭を抱えながら狭子の足元がふらつく。
「…っ!!?」
狭子の右足首がガクンとなったかと思うと…そのまま体勢が崩れ始める。
落ち…る!!?
足を踏み外した事に気が付くが、時既に遅く…頭から地面に落ちていく。
ガタタタタ!!!
階段から転げ落ちて頭をぶつけたのと同時に、私の視界は真っ暗になっていくのであった――――――
「ん…」
私は重たくなった瞼をゆっくりと開き始める。
その後、少しの間ボンヤリしていたが、周囲の様子が違う事に気が付く。
「ここ…」
自分の視界には、木の葉っぱや枝が見える。
それは、まるで木陰にいるような感覚であった。
「お!目を覚ましたみたいだな!」
「…?」
狭子はゆっくりと身を起こすと…そこには、見知らぬ青年がいた。
「ここは…どこ…?」
私は、起きたばかりのような眼で、その青年の方を見る。
「ここは、円塚山。君は、道端で倒れていたのだ。…覚えているか?」
「…痛っ!」
ボンヤリとしていた狭子の頭に、ズキッとした痛みが走る。
そうか…。私、学校の階段から転げ落ちて…
その痛みによって、自分が頭を打って気絶していた事に気が付く。すると、目の前にいる青年は、不思議そうな表情(かお)で口を開く。
「見たことのない服装をしているが…異国の人間か…?」
青年の言葉に、やっと我に返る。
「そういうあんたこそ…時代劇のコスプレ?」
「コス…プレ…?なんだ、それは?」
狭子の台詞に、ますます首をかしげる青年。
しかし、考えるのを諦めたのか、スッと立ち上がる。
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