天草四郎物語

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「やめなさい」 私は満面の笑みを浮かべて、子供達に語りかけました。 ゲームのキャラクターと言えども、子供達に私の優しさが伝わるはずです。 優しさが伝われば、きっと弱気者への暴力が間違っていると気付いてくれるはず。 男の拳には意味があるということを。 「この野郎!」 「くらえ!くらえ!」 「父ちゃんを返せ!」 ゲシゲシと蹴り続ける子供達。 あ、あれ。 何で伝わらないのですか。 「やめなさい」 私は一人の子供の肩を掴みました。 「離せ!」 子供は私の制止を振り切り、亀を蹴り続けます。 「能力……」 “死神の翼” 私は瞬時に背中から翼を生えさせて、子供達に向けて風を吹かせました。 「「うわああああ!」」 風に煽られた子供達は体を宙に浮かせ、数メートル先まで吹き飛ばされていきます。 地面に投げ出された三人の子供達は、直ぐ様、手をつき私を見上げました。 「ば、化け物!」 まるで鬼を見るような脅えた表情。 「男の拳には意味があ……」 「化け物だああああ!」 子供達は慌てて起き上がり、何度か転びそうになりながらも私と亀の元から去っていきます。 あれ?おかしいですね。 これじゃ、私が悪者みたいじゃないですか。
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