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私にはその気配の正体が、誰なのかすぐにわかりました。
「天草様……ごめんなさい」
柱の陰から現れたのは。
「申し訳ありません。天草様……」
乙姫さんと亀さん。
不気味に連なる何本もの謎の白い柱。
これは一体、何のために建っているのでしょうか。
気になってしょうがないです。
私は、何だか死んだ様に暗い表情をした乙姫さんと、亀さんに話しかけました。
「何で謝るのですか?謝罪しなければいけないのは、こちらの方です。すみません!何だか、いつの間にか寝てしまったみたいで。これは一体、何なんでしょうね。申し訳ないのですが、取って頂けると助かります」
私の言葉に、乙姫さんは何故か驚きを見せた。
何か、おかしいことを言いましたかね?
しばらくの沈黙。
「乙姫さん?」
私は立ち尽くしたままの乙姫さんに、もう一度呼び掛けました。
すると、何故か乙姫さんは首を横に振ります。
「天草様。その枷(かせ)を取ることは出来ません」
「ん?」
私の口は、思わずヘの字の形に曲がります。
「ど、どういうことですか?」
「その枷は、命力を封じ込めるために作られた特別な拘束具です。ごめんなさい。天草様。貴方には生け贄になってもらいます」
な、何を言っているんだ?
乙姫さん。ちゃんと日本語で喋ってください。
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