天草四郎物語

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空気を振動させるほどのカニさんの痛み声。 苦しいでしょうね。 すぐに楽にしてあげます。 私は分度器を動かし、射程距離を正確に測定した。 角度に合わせて、さらにコンパスの針が動く。 その間にも、カニさんはどんどん溶け始めた。 もう決着はついたようなものですが……。 一気に楽にしてあげます。 狙った先は、カニさんの甲羅と甲羅の間の僅かな切れ目。 胴体中心部。 この状態で、狙いを外すことはありません。 私が手を振ると同時に、構えられていたコンパスの針が抜け、ロケットの様に凄まじい速さで敵に向かって一直線に飛び出す。 それは一瞬の出来事だった。 自分の能力にも関わらず、私にでさえ目で追えない速さですからね。 巨大な針は、カニさんの体を一瞬にして通り抜ける。 この技は基本的には、大柄な人にしか使えませんからね。 その直後、カニさんは大きくバランスを崩し、地に倒れ伏せた。 崩れると同時に、豪快に砂埃が一帯に舞う。 さらに体を溶かし続ける紫色の液体。 辺りには、溶かしたことによって生み出される煙が漂った。 もうピクリとも動かないカニさん。 「勝った……」 まさに完全勝利。 私は能力を解除した。
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