43766人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
空気を振動させるほどのカニさんの痛み声。
苦しいでしょうね。
すぐに楽にしてあげます。
私は分度器を動かし、射程距離を正確に測定した。
角度に合わせて、さらにコンパスの針が動く。
その間にも、カニさんはどんどん溶け始めた。
もう決着はついたようなものですが……。
一気に楽にしてあげます。
狙った先は、カニさんの甲羅と甲羅の間の僅かな切れ目。
胴体中心部。
この状態で、狙いを外すことはありません。
私が手を振ると同時に、構えられていたコンパスの針が抜け、ロケットの様に凄まじい速さで敵に向かって一直線に飛び出す。
それは一瞬の出来事だった。
自分の能力にも関わらず、私にでさえ目で追えない速さですからね。
巨大な針は、カニさんの体を一瞬にして通り抜ける。
この技は基本的には、大柄な人にしか使えませんからね。
その直後、カニさんは大きくバランスを崩し、地に倒れ伏せた。
崩れると同時に、豪快に砂埃が一帯に舞う。
さらに体を溶かし続ける紫色の液体。
辺りには、溶かしたことによって生み出される煙が漂った。
もうピクリとも動かないカニさん。
「勝った……」
まさに完全勝利。
私は能力を解除した。
最初のコメントを投稿しよう!