天草四郎物語

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でも、また失敗した。 茹でるのではなく溶かしてしまったら、もう泥々になっちゃって、食べることが出来ないじゃないですか。 私は溶けゆくカニさんの体を見ながら、激しく後悔する気持ちが生まれました。 「ん?」 フライシューズのエンジンを切って着地すると、二つの人影を感じる。 乙姫さんと亀さんだった。 まるで、私の事を化け物でも見るかの様な瞳で見てきています。 そう言えば、私はあの二人にはめられたんですよね。 本当にクエストは恐ろしいです。 物語の定番の流れを普通に裏切ってきました。 浜辺で亀さんを虐めていた子供たちが正しかったなんて、本来はあってはならないことです。 おそらく、亀さんは人間を竜宮城に誘い込み、カニさんに食事として提供していたのでしょう。 乙姫さんと組んで。 私はゆっくり二人に近づいた。 おそらくさっきのがボスですよね? でも、クエストが終わらないとなれば、あの二人を倒さなければならないのでしょうか? 亀と女性を殺すなんて、何て残虐なんでしょうか。 あの二人は、ほとんど無力なぐらい弱そうに見えますが……。 様々な考えを巡らせる中、二人に近づくと乙姫さんが力が抜けた様にその場に座り込んだ。床にひょろひょろと座り込み呟く。
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