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「亀さん。ありがとうございました」
浜に到着した私は、亀さんにお礼を告げました。
来た時と変わらぬ静けさ。
心地よい波の音が耳に届きます。
その海岸をなぞるように生えた桜の並木道。
目が見えなくても、私にはわかるのです。
その美しさが。
「いえいえ、ぜひともまたお越し下さい。本当にありがとうございました」
亀さんは私に別れを告げると、海へ戻っていきます。
亀さんが海の中へ消えていく姿を見送り、私は呟きました。
「さて、どうやって帰りますか。クエストログアウトの出口でもあればいいのですが……」
ふと、脇に抱えたたまて箱の存在に気が付く。
帰りがけに乙姫さんがくれたものですね。
「開けてみますか」
私は箱を砂の上にそっと乗せて、蓋を持ちました。
出来ることなら、小判的な光るものがいいんですけどね。
来週、ブラックアウトから久しぶりにログアウトするので、そしたら馬が走るゲームを眺めに行きたいのですが……。
私は、ゆっくり蓋を開けた。
「ん?」
中から、まるで閉じ込められていたかの様な煙が溢れ出す。
ま、まさか罠ですか!?
しまった。顔面直撃は避けられない。
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