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「・・・んっ・・・」
鍵が開く音、ドアの開閉する音で目が覚めた。
「・・・・6時前か。」
寮生活が始まって1週間。
和久井は、毎日夜中に出掛け、明け方に戻ってくる。
何をしているのかは聞いてない。
貴志さんは知っているみたいだけど、いつも逃げられてしまう。
本人に聞くのが1番良いとは思うが・・・・
「あっ・・・・」
「お帰り。」
「っ・・・・ただいま・・・・です。」
「・・・・・・」
和久井に話し掛けるたび、怖がらせているんじゃないかと思えるくらいビクッとされる。
1週間経ち、少しは慣れたように思うが『お帰り』と声を掛けるこの瞬間。
この瞬間だけは・・・・
泣きそうな顔をされて、どうして良いのか分からなくなる。
理由が分からないので、どうする事もできないが。
「少し寝るか?」
「あっ、はい。・・・あの・・・」
「ん?」
「スミマセン、起こしてしまったみたいで・・・・」
「いや、良いよ。大丈夫だ。それよりお前は平気なのか?」
「僕・・・・ですか?」
なぜそんな事を言われたか分からない顔をしている。
「あまり寝てないんだろう?」
「・・・・いつもの事なので・・・・問題ありません。」
「そうか。」
まだ完全に心を開いた訳ではないようだ。
「では・・・・失礼します。」
「おやすみ。」
「・・・・おやすみなさい。」
「取り敢えず、朝メシでも作ってやるか。」
どうにかしたいと、意地になっているような気もするが、和久井を見ていると何かしてやりたい気持ちになる。
「弟がいたらこんな感じなんだろうか・・・・」
俺は独り呟きながら、朝食の用意を始めた。
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