-1-

6/9
前へ
/39ページ
次へ
席に着き、近くの飛鳥と話しをしていると担任の教師が入ってきた。 簡単な自己紹介をして、すぐに寮の説明と部屋割りを告げられる。 1階は警備室をはじめ、食堂や談話室など全員が使える部屋があるらしい。 1年は2階の部屋だそうだ。 「じゃあ、鍵配るぞー。201号室、和久井春日、柏木悠弥。」 (俺より上か・・・・) 面倒な事にならなければと思いながら鍵を受け取りに行く。 「次。202号室、西澤薫、佐伯飛鳥。」 前へ行く2人を見ながら思うのは・・・・ (うるさい・・・・) 次々と部屋が伝えられていくが、やたらとうるさかったのは俺達の時だけだった。 こんなやり方にしなくてもと思うが理事長いわく、『自分の最初の立ち位置を知る事によって、その後の道も決まる。良い・悪いどちらへ進むかは本人次第だが。』だそうだ。 要するに、自分より上に人がいれば越えようと努力をするし、自分が上にいれば抜かれないように努力をするって事だろう。 「--以上だ。荷物は部屋に届いている。今日はこれで終わりだから、今日中に荷物を片付けるように。」 担任の号令に挨拶をする。 「悠弥~。帰ろうぜ!!」 挨拶も早々に飛鳥が声を掛けてきた。「ハルちゃんも一緒に・・・・っていないし!!」 「お前な・・・・余計な事はするなと言っただろう。」 能天気な飛鳥の頭を叩き、薫とともに寮へ向かう。 「だってさぁ、せっかく悠弥が同じ部屋なんだぜー。仲良くなりたいじゃん。」 「さっきので分からなかったのか?和久井は関わってほしくないんだよ。」 「・・・・そんなの寂しいじゃん。」 「それでも。飛鳥はさ、もう少し考えてから行動したら?」 「薫の言う通りだ。」 「そんなん言われても、俺分かんねーし。友達になるって、考えなきゃいけないの?」 「・・・・・・」 飛鳥の言いたい事は分かる。 だが、そう単純な問題ではない。 けど・・・・ 「まぁ、お前なりに頑張れよ。」 「へっ?」 「わぁ~。悠弥が優しい・・・・」 「うるせーよ。」 単純で、裏表がなくて、誰にでも平等で。 俺と薫が持っていないモノを持っている飛鳥。 まったくの無意識・無自覚だろうけど。 (これはコイツの長所だな) 「悠弥ぁ、置いてくぞー。」 考え事をすると、歩くペースが落ちるらしい。 飛鳥にせかされ、俺は2人に追い付く為に足を速めて行った。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

246人が本棚に入れています
本棚に追加