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席に着き、近くの飛鳥と話しをしていると担任の教師が入ってきた。
簡単な自己紹介をして、すぐに寮の説明と部屋割りを告げられる。
1階は警備室をはじめ、食堂や談話室など全員が使える部屋があるらしい。
1年は2階の部屋だそうだ。
「じゃあ、鍵配るぞー。201号室、和久井春日、柏木悠弥。」
(俺より上か・・・・)
面倒な事にならなければと思いながら鍵を受け取りに行く。
「次。202号室、西澤薫、佐伯飛鳥。」
前へ行く2人を見ながら思うのは・・・・
(うるさい・・・・)
次々と部屋が伝えられていくが、やたらとうるさかったのは俺達の時だけだった。
こんなやり方にしなくてもと思うが理事長いわく、『自分の最初の立ち位置を知る事によって、その後の道も決まる。良い・悪いどちらへ進むかは本人次第だが。』だそうだ。
要するに、自分より上に人がいれば越えようと努力をするし、自分が上にいれば抜かれないように努力をするって事だろう。
「--以上だ。荷物は部屋に届いている。今日はこれで終わりだから、今日中に荷物を片付けるように。」
担任の号令に挨拶をする。
「悠弥~。帰ろうぜ!!」
挨拶も早々に飛鳥が声を掛けてきた。「ハルちゃんも一緒に・・・・っていないし!!」
「お前な・・・・余計な事はするなと言っただろう。」
能天気な飛鳥の頭を叩き、薫とともに寮へ向かう。
「だってさぁ、せっかく悠弥が同じ部屋なんだぜー。仲良くなりたいじゃん。」
「さっきので分からなかったのか?和久井は関わってほしくないんだよ。」
「・・・・そんなの寂しいじゃん。」
「それでも。飛鳥はさ、もう少し考えてから行動したら?」
「薫の言う通りだ。」
「そんなん言われても、俺分かんねーし。友達になるって、考えなきゃいけないの?」
「・・・・・・」
飛鳥の言いたい事は分かる。
だが、そう単純な問題ではない。
けど・・・・
「まぁ、お前なりに頑張れよ。」
「へっ?」
「わぁ~。悠弥が優しい・・・・」
「うるせーよ。」
単純で、裏表がなくて、誰にでも平等で。
俺と薫が持っていないモノを持っている飛鳥。
まったくの無意識・無自覚だろうけど。
(これはコイツの長所だな)
「悠弥ぁ、置いてくぞー。」
考え事をすると、歩くペースが落ちるらしい。
飛鳥にせかされ、俺は2人に追い付く為に足を速めて行った。
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