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特にする事もなくボーッと待っていると、和久井の声が聞こえてきた。
「ここで良いですって。」
いつもの様子からは考えられないくらい声を張っている。
だいぶ慌てているようだ。
(・・・・あの2人のやり取りも見物だな。)
飛鳥と同じように誰とでも仲良くなれて、誰にでも好かれる貴志さん。
けど、飛鳥以上に天然でマイペースなうえに、しっかり自分を持っている人。
頑固・・・・とも言うか。
飛鳥よりも対応に困るはずだ。
「ちょっ、結城先輩っ。」
案の定、和久井は貴志さんに引きずられるように俺のいるリビングへ連れて来られていた。
「っと・・・・」
俺の隣に座らされた和久井は、勢い余って俺の方へ倒れてきた。
(何だ・・・・軽いし細いな)
そんな事を思いながら、和久井を起こしてやる。
「スミマセン・・・・」
和久井は俺の方を見ずに、小さな声で言った。
「いや、気にしなくて良い。貴志さん、悪い人ではないんだが、少し強引な所があってな。」
「ちょっと、悠弥!!強引って何?こんなに優しい俺なのに。」
少し口を尖らせて、拗ねたように言う貴志さんを見て、ちょっと微笑ましくなる。
可愛らしい人なんだ。
「だから、『悪い人じゃない』って付け足してあげたでしょう。」
「ん~・・・・納得いかないなぁ。」
「そんなこと言ってないで、早く用事を済ませてください。」
「あぁ、そうだった。えっとね、これが・・・・」
「ちょっと待って下さい。」
話しを始めようとした貴志さんの言葉を和久井が遮った。
「どうしてこの人がいる所で話しをしなくてはいけないんですか?」
「・・・・?」
話しの内容を知らない俺は首を傾げるしかなかった。
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