-1-

9/9
前へ
/39ページ
次へ
「あのな、和久井・・・・」 貴志さんがいつになく真剣な顔で話し出す。 「いくら自分の部屋があるって言っても、お前と悠弥はルームメイトなんだ。一緒に生活していく上で、悠弥には知る権利がある。そうは思わないか?」 「・・・・・・」 和久井は俯いて、膝の上で作った拳に力を入れている。 「悠弥?」 薫と飛鳥が部屋に入ってきた。 「それにね・・・・」 その2人を見て、貴志さんが口を開いた。 「味方・・・・じゃなくて仲間かな、うん。仲間はね、少しでも多い方が良い。コイツらは、何があっても信用できるから。」 「だけど・・・・僕は・・・・」 俺には、和久井が何かに怯えているように見えた。 「とにかく!!みんなここに携帯の番号とアド書いて。」 「??」 突然話しを振られて、目が点になる薫と飛鳥。 「で、これが寮の裏門と裏口の鍵ね。」 そんな2人を余所に話しを続ける貴志さん。 「後、これが俺の携帯。いつでも気軽に掛けてな。」 何となくだけど、分かったような気がする。 和久井が何かを背負っているって事が・・・・。 「和久井、携帯出せ。」 俺は、キョトンとしている2人を横目に自分の携帯を出し、和久井に携帯を出させた。 「どうして・・・・ですか?」 どうしても関わってほしくないようだ。 「いいから。」 俺は、和久井の制服の胸ポケットに手を突っ込み、携帯を取り出した。 「なっ!?」 「おっ、悠弥も強引じゃん。」 貴志さんが、ニコニコしながら言う。 「うるさいです。そうさせたのは貴志さんでしょ。」 きっと貴志さんには、俺がこうする事が分かっていたんだと思う。 (こうなったら、思いっ切り関わってやるさ。) 薫までニコニコしているのは気に食わないが。 「お前らのも送れ。」 「おうっ!!」 「分かったよ。」 飛鳥はかなり嬉しそうだ。 「ど・・・・して・・・・」 和久井はかなり動揺している。 貴志さんが、そんな和久井の正面に回り込み子供を諭すように話し掛ける。 「コイツらの事さ、信じてやってよ。」 「・・・・・・」 「少しずつで良いから。なっ。」 貴志さんに優しく言われ、和久井はコクりと頷いた。 「よしっ。後は頼んだぞ。」 「分かりました。」 こうして、俺達の高校生活が始まったのだった。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

246人が本棚に入れています
本棚に追加