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「あのな、和久井・・・・」
貴志さんがいつになく真剣な顔で話し出す。
「いくら自分の部屋があるって言っても、お前と悠弥はルームメイトなんだ。一緒に生活していく上で、悠弥には知る権利がある。そうは思わないか?」
「・・・・・・」
和久井は俯いて、膝の上で作った拳に力を入れている。
「悠弥?」
薫と飛鳥が部屋に入ってきた。
「それにね・・・・」
その2人を見て、貴志さんが口を開いた。
「味方・・・・じゃなくて仲間かな、うん。仲間はね、少しでも多い方が良い。コイツらは、何があっても信用できるから。」
「だけど・・・・僕は・・・・」
俺には、和久井が何かに怯えているように見えた。
「とにかく!!みんなここに携帯の番号とアド書いて。」
「??」
突然話しを振られて、目が点になる薫と飛鳥。
「で、これが寮の裏門と裏口の鍵ね。」
そんな2人を余所に話しを続ける貴志さん。
「後、これが俺の携帯。いつでも気軽に掛けてな。」
何となくだけど、分かったような気がする。
和久井が何かを背負っているって事が・・・・。
「和久井、携帯出せ。」
俺は、キョトンとしている2人を横目に自分の携帯を出し、和久井に携帯を出させた。
「どうして・・・・ですか?」
どうしても関わってほしくないようだ。
「いいから。」
俺は、和久井の制服の胸ポケットに手を突っ込み、携帯を取り出した。
「なっ!?」
「おっ、悠弥も強引じゃん。」
貴志さんが、ニコニコしながら言う。
「うるさいです。そうさせたのは貴志さんでしょ。」
きっと貴志さんには、俺がこうする事が分かっていたんだと思う。
(こうなったら、思いっ切り関わってやるさ。)
薫までニコニコしているのは気に食わないが。
「お前らのも送れ。」
「おうっ!!」
「分かったよ。」
飛鳥はかなり嬉しそうだ。
「ど・・・・して・・・・」
和久井はかなり動揺している。
貴志さんが、そんな和久井の正面に回り込み子供を諭すように話し掛ける。
「コイツらの事さ、信じてやってよ。」
「・・・・・・」
「少しずつで良いから。なっ。」
貴志さんに優しく言われ、和久井はコクりと頷いた。
「よしっ。後は頼んだぞ。」
「分かりました。」
こうして、俺達の高校生活が始まったのだった。
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