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そして、爺さんがラジオ体操を始めた。 「さすがに店内では、音は聞こえないっすね」 「ドア閉まってるしな」 と、いうことでラジオ体操の音楽は聞こえず、コンビニのウインドウ越しに、なんかパントマイムでも見てるかのような形になった。 爺さんは、両手を上に挙げて、それからその手を身体の前から降ろす。と、いう動きを始めた。 「なあ、ラジオ体操って最初、何するんだっけ?」 「……ええと、確か『腕を前から挙げて背伸びの運動~』ってヤツじゃないですか。多分」 「ああそっか、そうだったかもな」 でも、そういう動きには見えない。 年だから、身体が思うように動かないのか、両手を降ろすとき、右に寄れ、左に寄れ、そして何故か正面で、小さく前ならえ、みたいな姿勢でしばらく固まってしまう。 腰も変な風に引けてるし。 「なんか、全然違うことしてるように見えるな」 うーん、というか何か見覚えのある動きなんだよな。 爺さんは、同じ動きを何度も繰り返す。 両手を挙げる。両手を右側に降ろす。少し持ち上げ、左側に降ろす。正面に持ってきて、少し固まる。この時、腰は引けている。 ? 右に降ろす。左に降ろす。正面で固まる。 右に降ろす。左に降ろす。正面で固まる。 エガ、シラ、アタック。 「「江頭ぁぁあーーー!!!」」
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