万引き

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事の顛末は30分前に遡る。 会社から帰った宮原は、仕事の疲れを癒やそうとビールを飲もうとした。 しかし、偶然切らしており、仕方なく近くのコンビニに買いに来たのだ。 何故、こんな場面に遭遇したのか。 僕はこういった場面に直面すると、いつまで経っても頭から離れず悩み続けるのだ。例えば、こんな事を考える。 コンビニの万引き被害額は、一般的に売り上げの0.3%と言われている。 そして、コンビニの1店舗あたりの年商は1億6000万円とする。 そうすると、コンビニの万引き被害総額は、1億6000万円×0.3%=48万円。 1カ月あたり、4万円の被害があると考えられる。 それだけ万引きによる被害は大きく、万引きが原因で閉店に追い込まれた店もある。 それを考えると、万引きを止め警察に引き渡すべきなのかと思う。 だが、次に加害者側について考えてしまう。 そもそも何故、万引きをしたのか、と。 単純にお金が無い。 スリルが欲しい。 誰かに脅され、仕方なくやったなど理由は様々だ。 ならば、先ほどの老人はどうだろう? 着ていた服はボロボロで、とても裕福には見えない。 お金が無いのが理由なら、こうは考えられないか。 老人には金が無く、頼れる身内もいない。 その日に食べる物にも困る生活を送っており、常に空腹に耐えている。ついには空腹で意識が朦朧とし、仕方なく犯罪に手を染めたのではないかと。 もしそうだとすると、老人の万引きを止める行為は、生きる事を否定する行為ではないか? そう考えると、自分の無力さを感じ落ち込む。 結局、僕には何もできないのだ。
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