革命の次の日《早朝》

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「雫様…雫様…その…大丈夫ですか?」 暗く冷たい畳の間には太い木の格子が張られ、壁には刳り貫かれた小さな窓がある。そこから僅かに見える空は、朝を迎えて鮮やかな青。時々白い雲が覗くように流れる。 「ええ。私は大事ありませんよ。雨流は寒くありませんか?私の羽織を……」 「い、いえいえ!滅相もございません!雨流は体温が高いのであります!へっちゃらでございます!」 先程の気品溢れる女の名は二条院雫(ニジョウイン シズク)。 王の独裁国家、阿魏国、その内約三分の一の土地、第二集を取り仕切る王家、二条院家の当主である。 彼女は今、阿魏国第一集、一条院城の貴族牢に革命軍の手によって投獄されている。 阿魏国は階級が厳しく、王と王家、その下に政治を担う華王家、軍事を取り仕切る阿武家があり、その下は医者や学者や一部の商人、職人以外の一般市民は“従民”(ジュウミン)と呼ばれ、貧しい暮らしを強いられていた。 「雫様…ここは…牢獄でしょうか?」 雨流(アマル)と呼ばれた十歳前後の少女は辺りを見渡して恐る恐る尋ねた。 「そうですね。恐らく貴族牢だと思われます。貴族の地位でありながら犯罪を犯したものは、一般的な囚人が投獄される監獄とは異なり、城にあるこのような牢に投獄されるのですよ。」 そこは牢とは言えど、畳が敷き詰められた小綺麗な部屋で、薄暗さや冷たさを覗けば一般的な監獄より余程良いものだ。
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