プロローグ

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ねぇ父さん。“演劇”ってすごいね。 そうだろう? 父さんはこんな素晴らしい舞台の脚本を書いたということを、心底誇りに思っている。 少年にとって、この物語は特別なもの。 父の手によって創り出されたストーリー。それに基づいて織り成されるこの舞台。 父さん。僕もあんなふうに演劇してみたいな。 ユウキにはまだちょっと早いな。もう少し大きくなってからだ。 何で? ほら、あの子だってああして踊っているじゃないか? あの子は小さい頃からずっと練習してきたんだ。ユウキも練習したらきっとできるようになるよ。 ……どれくらいかかる? んー5年くらいかな。 ……そんなに待てないよ。 悔しかったらユウキも練習しなさい。 父はそう言うと微かに微笑んだ。 ――――その微笑みを最後に、少年の記憶はそこで途絶えた。
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