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タマの手が退き、恐る恐る覗き込んだ。そこには、10円玉が二枚乗っていた。
「なにこれ?」
「お前の笑顔、安いから買ってやる」
視線を逸らし、つまらなそうに言うタマ。
俺はこの20円の意味を理解し、嬉しくなった。
「これからは、俺の為に20円の笑顔見せろよ。その度に買ってやるから」
素っ気なく言うタマに抱きつく。普段ならそれだけで殴られそうな行為だが、今日はなぜか許してくれた。
タマの手がそっと俺の背中に回るのを感じ、俺は身を固くする。
「おまけだ、おまけ」
ポンポンと軽く背中を叩きながら言う。
20円じゃ得られないような幸せが今ここにある。そんな気がした。
「タマ…大好き」
「あぁー…、はいはい」
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