『小さな部屋の祈り』

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『小さな部屋の祈り』

ずっとあの窓辺から 外に出る日を祈って来たわ 空色の遮光カーテン 窓から眺める空は オブラートのように 憧れを覆い隠した。 届かないのに 伸ばしてしまう指 ガラス窓に阻まれた。 でも いつかは誰かが その心ごと掴んでくれるんじゃないかって 諦められずにいた。 祈りは歌になり風にのせた 窓から指す光が眩しい。 祈り続く日々 いつしかあの窓には 緑の蔦が絡まって 私を閉じ込め 捕える籠を複雑にした。 一人きりだと夜は寂しい。 窓からでさえ 見える星空は限られているのに。 入れ物に自分の想いを吹き込んで 寂しさをまぎらわせるために つらい夜ごとに強く抱いて眠った。 ねじ切れそうになる心 どこか遠くに行かないように 見張ったまま 涙の海に溺れかけた。 ねぇ 『傷付けあう為じゃなく 僕らは出会ったって言えるかな?』 って あの部屋に流れてた歌、思い出す。 私の扉をたたく手何度も 音を変え形を変え 降り積もってきたわ。 でも この部屋に溜った涙は重すぎて 簡単にはドアが開かないの。 私だってその手のもとにいきたい 触れ合いたいのに。 涙が絡み付いて… 触れているところから 私の体力を体温を少しづつ奪っていくの 体が動かなくなってきて せめてこのまま死ぬことが無いように かけていたドアの鍵は外したわ。 でも 鍵はかかっていなくても そのドアを開ける力は私には無いから… もう、横たわったまま動かない体で また 涙だけ溢れてゆくの。 だから ずっと、このドアを開ける人を探してる。 救いあげてくれる人を探してる。 一人の闇は多すぎて私には 涙で荒がう力も奪われてしまった。 このままこの海に沈めば 私はきっと あの闇に捕まったまま逃れられずに 死んでゆくから どうか その前に救い出して。
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