1696人が本棚に入れています
本棚に追加
「……そっか」
ふわっと真樹の声が柔らかくなり、恐る恐る瞼を上げて――私はそのまま、目を見開いた。
嬉しそうに、そして優しく綻んだ真樹の笑顔に――胸がきゅっとして、何も言えなくなる。
そんな私をよそに、真樹は壁から手を離して、仄かに赤くなった顔を隠すようにしゃがみ込んだ。
「焦ったー……」
独り言のような、小さな呟き。
照れたように、頭をかく仕草。
その一つ一つに、胸の奥がじんわりと温かくなっていって……再び涙が、滲み出してしまいそう。
私もその場にしゃがみ、真樹と向かい合った。
「……真樹。聞いて、いい?」
「……ん」
「どうして来てくれたの?」
腕の中に埋めていた顔を上げ、真樹は瞳を揺らしつつ私を見つめた。
「……我慢できなかったんだよ」
「何を?」
「おまえが他の奴に触られてるのが」
……え?
最初のコメントを投稿しよう!