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「準備いい?」
「こっちはオッケ!」
「あと何分ぐらいー?」
「五分!」
飛び交う声。行き交う人々。
私はそこから少し外れて、教室の外でロッカーにもたれながら、その様子を眺めていた。
時計に目を落とすと、確かに九時五分前だった。
どうやら、お客さまが来るまでには何とか間に合ったようだ。
「あゆ」
ちょうど教室から出て来た真樹は、目が合うと隣に並んで私の髪に手を伸ばした。
「ここんとこ、ちょっと崩れてる」
「え?嘘っ!」
慌てて真樹の触れたところに、手を伸ばす。
今日は少しアイロンで巻いて、ふわふわのポニーテールにしてみた。
今朝、すごく時間をかけて作った髪型だ。
「あー、ちょっとほつれてる。トイレ行って直さなきゃ」
「気合い入れすぎじゃね?」
「そんなことないよ!このくらい普通だもん」
「ほら」と、周りにいる女の子に視線を移す。
みんな、いつもの三割……いや、五割増しくらいで髪型に気合いを入れているのがわかる。
真樹は「確かに」と小さく笑って、ロッカーに寄りかかりながら呟いた。
「ま、今日は文化祭だもんな」
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