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「………………え……?」
目の前に広がったのは、小さなアパート。西洋風の。
それを誇張するように、一階には高貴な雰囲気漂うパティスリーがある。
赤い壁に、金色の文字で、「Taught」と書かれている。
「キミ、パティシエ?」な訳ないか。
「貴方見るところが違うわね。上よ。上」
彼女は不満そうに上に向かって指を指す。
「……オシャレなアパートだね」
嫌味違うよ。ほんと。赤を基調とした、西洋感溢れるオシャレなアパート。
「?」
赤にピンク系統の文字で書いてある所為で、同化して読みにくい。
けど、何か書いてある……?
「探偵、事務所……」
探偵事務所? 目を細める。探偵事務所だ。間違いない。
「お父さんかお母さんが探偵さん?」
「わかんない。そうだったのかもね」
「…………うん?」
ちょっと寂しそうな目の彼女。「で、キミのおうちはどこ?」
雰囲気は漂っても、小さなアパートだ。一階と二階しかないぞ。
「そこよ。探偵事務所。そこが私の家。ちなみにオーナーは私」
饒舌に、言葉巧みに。単語を次々と並べ、僕に指摘する暇を与えない。
「さあ、れっつごーよ」
「だが断る!」
再び掴まれたストールを、体を捻らせて首から外す。
今度は彼女がよろけた。ちょっと罪悪感。
「貴方、レパートリーそれしかないの?」
あ、知ってはいるんだ。と頷いていたら、今度はしっかりと手を握られた。
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