え、だから

1/11
前へ
/57ページ
次へ

え、だから

「バカ葵ぃいッッ!!」 全力で上り坂を走る 茜は炎天下の中、部屋を飛び出した切り行方不明の栞を探していた 家に帰っているものだと思い、栞の家に行ったが誰もいなかった 携帯にも出ないし、メールも返ってこない、もう散々走り回ったが 「…ここにも…いない!!」 今いるのは、いつも演技の練習をしてる公園だった 足を止めたとたんに汗が次々と滲み出て、ポタポタとアスファルトに跡を付けた 「…駅前もッ…はひぃッッ…学校もッッ…うぇッッ…コンビニもッッ……いなッッ…おぉおうぇえッッ」 あまりの体力の消耗に嗚咽が止まらない、汗もひかない、髪の毛が顔にひっついて、うっとうしい 「…栞ぃ…どこぉ…ぉぇ」 アスファルトの汗の跡が、葵の部屋で見たものと重なった 「…ぅッ…えッ……」 どんなに走り回っても、見つからない…どこ行ったの… 「……あ~~!!もうッッ!!暑い~ッ!!栞ぃい~~ッッ!!どこだ~ッ!!バーカバーカッ!!!ブァアアアカァアアアア!!!」 「…茜…ちゃん?」 聞き覚えのある声だった ゆっくり振り返ってみた 「……」 「……」 そこにいたのは、目を赤く晴れ上がらせた栞と 先程まで話題に昇っていた浪江先輩だった
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加