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「…なんか、ごめん」
「何がよ」
夏の夕暮れ、ヒグラシが悲しそうにカナカナと鳴いている
浪江先輩とは途中で別れ、茜は栞を家まで送っている最中だった
「…葵、きっと悪気はないと思うんだ…葵自身、物語が大好きだから」
「知ってるよ、それに……茜のせいじゃないし」
正直、葵が怒った理由よりも、栞がなぜ泣いていたのか知りたい、だけど…
そこまで思ったが、どう切り出せばいいか分からなかった
「……栞」
「私ね、浪江先輩に頼まれたの」
私が聞く前に栞が鼻を鳴らしながら言った
「…それって、その企画のこと?」
ついさっき、葵の伝言が書いてある紙を渡した
すると今度は何かを押さえ込むように、栞が言う
「…浪江先輩に、頼まれたのよ。」
二回目に言ったそれは、自分に言い聞かせているようにも聞こえた
「……」
なんだか…それ以上、聞いたらいけない気がした
「……」
栞が歩いていた足を止める、茜も少し前を歩いた所で気付き、足を止めた
……あ…今だ…
なんとなくそんな気がした
…聞かなきゃ
だが栞の声で、茜は聞くのをまた、ためらってしまった
「茜さ
このあと時間ある?」
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