枯れ果てたいくらい。

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 陽香は目を凝らして左も右もすぐそばの交差点を渡る人並みも見回したが、男の姿はまるで霧のようにかき消えてしまっていた。 「ちょっと……困るってばぁ……」  ビニール袋を握り締め、陽香は眉尻を下げて泣きそうな声で呟いた。  その声は、雨のせいでいつもより暗いアスファルトにぽつんと跳ね、消えていった。 .
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