枯れ果てたいくらい。

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 この1年くらい陽香の担当のようになっているショーコはいそいそと店の奥に足を運ぶと、小さな花束を持って戻ってきた。  5本の白い薔薇と、グリーンのかすみ草で彩られた小さな花束。陽香が決まってオーダーしているのは、この組み合わせだった。 「いつもありがとう」  花束を受け取ると同時に、陽香は封筒を渡した。毎月決まったものを買っている為、支払いはレジも打たずにこうして受け渡しのその場で済ませていた。 「今日は雨ですね。夜道は危ないですから、お気をつけて……」  眉尻を下げたショーコは、陽香を心配そうに見つめる。陽香はありがとう、と頷くと駅に向かって歩き始めた。  花束が潰れないように胸に抱くと、陽香は帰り道とは逆の方向の電車に乗り込んだ。  流れていく夜のネオンを眺めながら、陽香は息をついた。 .
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