枯れ果てたいくらい。

17/23
前へ
/480ページ
次へ
「すみません、今月も失礼します」 「ああ、はいはい。お疲れ様です、どうぞ」  にこやかな笑顔に笑顔を返し、陽香は歩道に戻りその場にしゃがみ込むと、献花の中に白いバラの花束を加えた。  ここで昔、陽香にとって高校の先輩にあたる男が命を落とした。  ──斉木守。  斉木は、自分の恋人をストーキングしていた女の飛び降り自殺に巻き込まれてしまったのだ。  陽香はその時現場にいたわけではなかったが、酷い惨状だったとメディアが伝えていた。よくよく見ると、アスファルトの色が変わっているところがある。恐らく、血の痕だろう。  それを見ても怖いと感じなくなってから久しい陽香は、目を閉じて手を合わせた。 .
/480ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10944人が本棚に入れています
本棚に追加